いよいよ卒業ですね。これからちょっぴりさびしくなりますね。
青山スクールに入って来た時のあの心配そうな顔はどこにいったのでしょうか。
きっとあのときは期待というより「不安」という一言でいっぱいだったのでしょう。
でも、今は「やった」という自信が顔に出ています。やればできるんですね。
今、あなたたちは日本から自分の国を見ることが出来ます。そして自分の国と日本を比較することもできます。さらに、その意見を日本語で言うこともできるようになりました。
よく頑張りました。
私はみなさんが青山スクールに入って来た時、三つのことを守って下さいと言いました。
思い出して下さい。
「しっかり日本語の勉強をすること、いろいろな国の友達をたくさんつくること、日本について知ること」の三つです。でも、みなさんはこの話を入学式の時に先輩の通訳の言葉を通して聞いたはずです。
今日の私の話は通訳がありません。通訳がなくても十分わかるようになったからです。
その話にはつづきがありますので聞いてください。
あなたたちは、昨年、つまり2001年に、ここで日本語を勉強していました。
2001年は、忘れられない年です。アメリカで大きなテロ事件があり、その後アメリカのアフガニスタン攻撃があったりしてその結果、たくさんの人の命が失われました。みなさんにはこれらの事件はどう映っていますか。私のアメリカ人の生徒さんもこの事件に巻き込まれてしまいました。
また、昨年、私は私の母をなくしました。
私にとって2001年は「人の死」を身近に考える年でした。そして、「人の死」を考えながら、「人に何かを伝える大切さ」を考えさせられました。
私は日本語の伝達方法は「相手に自分の言いたいことを想像してもらうコミュニケーションだ」と思っています。これは「相手を傷つけないようにする」という配慮からなのです。あなた方にはこれから日本語という言葉だけでなく、日本語の考え方も勉強してほしいのです。
英語の考え方のような「力と力のぶつかりあい」は日本人があまり好まない方法です。
もちろん、テロは憎いですが、私はアメリカのその後のやり方に失望してしまいました。世界にはアメリカのように「自分が正しいと言い張る」コミュニケーションもありますが、相手に考えてもらう方法があります。これが日本語のコミュニケーションです。
あなたがたはこの「相手の立場にたってコミュニケーションをする」という日本語を学んでいるのです。
日本語のこのコミュニケーションの原点は、「日本人は人間よりもっともっと大きな自然の力を信じている」ところにあります。大きな時間の流れのなかで人間は「生」と「死」を繰り返しています。
それは人間の力で変えることはできないものなのです。みなさんは日本語の自動詞の使い方を勉強しましたね。この考え方がその背景にあると思います。
その大きな時間の流れの中で人は次の世代の人に「自分が大切に思うこと」を伝えなければならないと私は考えています。
それでは「自分が大切に思うこと」とは何ですか?その一つは「一生懸命がんばること」です。
「じゃあ、なんのために?」
もちろん「他の人のために」です。自分のために一生懸命がんばっても私は意味はないと思います。自分が一生懸命頑張って、他の人のためになる、他の人のために出来ることを見つけることが大切だと思います。
一つはまず一生懸命頑張ること、そしてもう一つは、あなたたちの才能を充分活かして他の人のために自分のできることを見つけることです。あなたが他の人のために何ができるかを探すことです。君たちはもう頑張れることを日本語学校で証明しました。次はあなたの才能に気がつくことです。
入学式でもうひとつ「友達を大事にする大切さ」を話しました。
友達を大事にするにはまず自分が努力して自分の特徴を見つけることです。自分の力や才能が確認できたら、次にそれを他の人のために使うことです。それが大きな流れの中で「次の人に伝える」内容でしょう。
ちょっと視点を変えて考えてみましょう。
君たちの両親は君たちになにを伝えようとしているのでしょう。
両親は君たちに「頑張れ、なにかを見つけろ」と言っていますね。その心を忘れないでください。それに、両親に感謝することを忘れずにいてください。「・・・ていただきありがとうございました」というのも日本語のコミュニケーションのもう一つの原則です。感謝する気持ちです。
それと、元気でいること。病気にならないように注意することも必要です。
今日は卒業式ですが、青山スクールを卒業するためにはもう一つ入学式で話した「日本を知ること」が残っています。だからきみたちはまだ本当の意味で青山スクールを卒業はできません。
でも、とりあえず、卒業させることにします。
ここでおめでとうと言っておきます。よく頑張ったから。
またいつでもここに帰っていらっしゃい。
待っています。
最後になりましたが、留学生を育ててくださった先生方、また応援してくださった方々、この場をかりてお礼を申し上げます。「ありがとうございました」
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